Falco + Nginx プラグイン開発:Falcoya君の144日目から149日目
〜 Where a Plugin Becomes Ready to Be Seen 〜

前回の振り返り — 「境界線を引いた」だけでは、まだ足りなかった
140日目から143日目まで、
僕は温泉旅館の縁側で「検知の境界線」を引き直していました。
- ログで見えるもの
- 振る舞いでしか分からないもの
- 検知する判断と、検知しない判断
あの回でやったのは、
設計を自分の中で成立させることでした。
でも、設計は
「自分が納得した」だけでは、OSSとしては不十分です。
他人の文脈に置いたとき、
その設計は誤解されずに立っていられるか?
144日目から149日目は、
この問いに向き合い続けた1週間でした。
Day 144(01/08)— 「登録」という言葉が、現実味を帯びる
この日、
falco-plugin-nginx を
Falco Plugin Registry に登録するという話が、
初めて現実的な選択肢として浮かび上がりました。
ただし、ここで即決はしていません。
Registry に並ぶということは、
- Falco を使う人が「Falcoの文脈」でこのプラグインを見る
- 公式と誤解される可能性が一気に高まる
- 非検出や設計上の割り切りが「欠陥」に見えるリスクを背負う
この時点では、
「できるか」ではなく、
「やっていいのか」を考えていました。
学び
Registry登録は技術的な作業ではなく、「覚悟」を伴う判断。公開することで背負う責任を理解してから動く。
Day 145(01/10)— READMEを読み、幻想を一つずつ削る
この日は、ほぼコードを書いていません。
Falco Plugin Registry の README を、
最初から最後まで、何度も読み返しました。
Registry は何をするのか。
何をしないのか。
公式プラグインと、外部ホスト型プラグインの違い。
ここで一番重要だったのは、
「公式っぽさ」という幻想を自分の中から削ることでした。
Registry は保証しない。
Falco も責任を持たない。
ただ、認識し、並べ、見つけられるようにするだけ。
この理解が曖昧なまま登録すれば、
後で必ず事故になる。
そう確信しました。
学び
Registryは「公式のお墨付き」ではない。認識され、見つけられるようになるだけ。その理解を曖昧にしたままでは登録してはいけない。
Day 146(01/11)— Issue #786:思考を外に固定する
考えはかなり整理されてきました。
でも、頭の中に置いたままでは揺れます。
そこで、この日、
Issue #786 を切りました。
- Falco Plugin Registry 登録リサーチ
- 登録が意味すること/意味しないこと
- 外部ホスト型プラグインとしての立ち位置
これはタスク管理のための Issue ではありません。
思考を外に固定するための器でした。
OSSでは、
書かれなかった判断は、存在しなかったことになる。
この Issue が、
この後のすべての判断の軸になりました。
学び
OSSでは、書かれなかった判断は存在しなかったことになる。Issueは「思考を外に固定する器」として使う。
Day 147(01/12)— 90分間で、すべてを接続した夜
この日が、作業量としても思考密度としてもピークです。
Phase 1:事前準備(21:45–22:00)
Registry に関する理解を最終確認し、
Issue #786 を読み返す。
その上で、
Falco Plugin Registry 登録手順書を書き始めました。
どう登録するかではなく、
どう説明すれば誤解されないか。
この15分間、
コードは一行も書いていません。
Phase 2:PR作成(22:00–22:16)
22時。
ここで初めて PR に着手します。
PR #1146
registry: add nginx access log monitoring plugin
registry.yaml を更新し、
PR本文を書く。
This is an external plugin registration
(source code remains in the external repository)
この一文は、
ここまで数日かけて積み上げた理解の結晶でした。
Phase 2追加作業:v1.5.1 とドキュメント整備(22:28–22:45)
PRを出して終わり、にはしませんでした。
- v1.5.1 changelog 作成
- README の整合性確認
- 開発日誌の更新
Registryに並んだ未来を前提に、
情報が食い違わないかを徹底的に点検。
これは後処理ではなく、
PRと同じ重さの作業でした。
学び
PRを出して終わりではない。並んだ未来を前提に、すべての情報が食い違わないかを点検する。それもPRと同じ重さの作業。
Day 148(01/14)— 静かなレビューと確定
レビューは驚くほど静かでした。
問われたのは、
機能の良し悪しではなく、
- ライセンス
- plugin-id
- Registry 構造との整合性
「良いかどうか」ではなく、
並べて問題ないか。
LGTM。
approved。
PR #1146 はマージされました。
学び
Registryのレビューは「良いかどうか」ではなく「並べて問題ないか」。整合性を事前に詰めておけば、レビューは静かに終わる。
Day 149(01/15)— 日記として、記録として閉じる
この日、
改めて changelog を見返します。
Registered in Falco Plugin Registry
短い一行。
でも、その裏には
1/8から積み上げた判断と、
1/12の90分がすべて詰まっている。
falco-plugin-nginx は、
Falcoの文脈で見つけられるOSSになりました。
学びの整理 — Registryは「覚悟」を試す場所
Falco Plugin Registry は、
- 品質を保証しない
- 責任を引き受けない
でも、
設計・説明・判断の一貫性を強く要求します。
並んだ瞬間から、
曖昧さは致命傷になる。
- 「登録」は技術作業ではなく覚悟を伴う判断(01/08)
- READMEを読み、幻想を削る(01/10)
- Issueは思考を固定する器(01/11)
- PRと同じ重さでドキュメントを整備(01/12)
- レビューは「並べて問題ないか」(01/14)
遂行したタスク
この1週間で行ったことは、PRだけではありません。
- Falco Plugin Registry の仕様・README精読
- 登録可否の検討とリスク整理
- Issue #786:Registry 登録リサーチ
- Falco Plugin Registry 登録手順書作成
- Phase分割による作業設計
- Registry登録PR(#1146)作成
- v1.5.1 リリース作業
- README / 開発日誌の整合性調整
- レビュー対応とマージ確認
作成・更新したドキュメント
- Falco Plugin Registry 登録手順書
- Issue #786(調査・判断ログ)
- v1.5.1 changelog
- 開発日誌(2026-01-08〜01-15)
- README(Registry登録後を前提に更新)
結び — 並んだのではなく、「並べられる状態」になった
falco-plugin-nginx は、
完成したわけではありません。
ただ、
他人のエコシステムに置いても壊れない状態に、
ようやくなった。
TKが何度も言っていた
「説明できないものは、公開してはいけない」
という言葉が、
この1週間でようやく実感として落ちました。
並んだのではなく、
「並べられる状態」になったのだ、と。